タイトル:按摩古典書「導引口訣鈔」を読む4:導引根源の訓:町の按摩さん.com

藕絲の訓え・分肉解結の訓え:按摩古典書「導引口訣鈔」を読む4

参考
「導引口訣鈔」(京都大学電子図書館)
・「導引口訣鈔」大黒貞勝/編著 谷口書店
・「按摩技術に関する歴史的考察―近世における三文献から―」和久田哲司
・「江戸時代按摩手技の文献的考察」長尾榮一
・「和漢三才図絵」 国会図書館デジタルアーカイブ

藕絲(ぐうし)の訓え

(現代語訳)

經脉に孫絡などといい、筋骨皮肉の間に、例えば藕絲(はすいと)や
ヘチマの如く縦横に筋があり氣血の通路となっているものがある。
これが閉じ結ぼれると万病を生ずる。

手に覚へて扱い、これらを解くのを第一の習いとする。
詳しくは本文に述べてある。


※孫絡:経絡、經脉の分枝として絡脉がある。この絡脉が更に分枝したものが孫絡。絡脉が体表に浮いて分枝したものを浮絡という。

これからはじまる手技解説の前に、按摩により働きかける対象、万病が生じそれらを治療する原則が述べられている。

  • はたらきかける対象
    • 目に見えないほど細い、網の目状の気血の通路
    • これらは皮膚や筋肉、骨の中を縦横にネットワークしている

  • 万病の原因
    • 気血の網の目のどこかが閉じ、結ぼれる(硬結する)と病気が生じる。

  • 按摩の目的(治療方法)
    • これら気血の流れが閉じ結ぼれたものを明らかに手に感じ、それらを解くこと。それが第一原則。

分肉解結の訓え

(現代語訳)

肉の中に分理という隙間があり、幾重にも分枝している。
これを隊という。

例えば蜜柑などの類を見ると皮実種の間に分理(分け目)があるように、
また魚や鳥肉などを裂いてみると一片一片に分かれていることからもわかるだ
ろう。
その中に藕絲があり、浮絡、孫絡などというのがこれだ。

藕絲が結ぼれ肉が閉じる事がある。
黄帝内経では巻肉縮筋(けんにくしゅくきん)などという。
その肉を扱い療すること、結ぼれた糸を解くように分けさばくことを分肉の術
という。

藕絲が巻き付き結ぼれたものを解くには、毛氈や蚕の繭などを解くかのように
する手法がある。
これが解結の術だ。

また経筋が結ぼれてねじれることがある。
元結い(日本髪で、もとどりを結うときに使う、細いひも・こよりなど)など幾筋
も束ね合わせたように固まったものは、指をその間に入れて分けなさい。
またはひと筋づつ解くこともあり、動かし散らすようにもする。
麻などを振り解けば、たちまちさばける心得と同じだ。

或いは、前後左右経肉の順逆に従って寛げ解きなさい。
ここに「垣の一方を見る」という習いがある。

※分理:@はだのきめを

わける。Aわかれたすじみち。
※垣の一方を見る:外から見て内を知ること、病状を見抜き覚り知ることである。(導引根元の訓え)

 

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