タイトル:按摩古典書「導引口訣鈔」を読む5:胸腹の訓え 図解1:町の按摩さん.com

胸腹の訓え 図解1:按摩古典書「導引口訣鈔」を読む5

参考
「導引口訣鈔」(京都大学電子図書館)
・「導引口訣鈔」大黒貞勝/編著 谷口書店
・「按摩技術に関する歴史的考察―近世における三文献から―」和久田哲司
・「江戸時代按摩手技の文献的考察」長尾榮一
・「和漢三才図絵」 国会図書館デジタルアーカイブ

術者の位置と手

「胸腹の訓」の手技は、受け手は基本的には仰向けが良いと思われますが、座位でも可能です。

  • 術者は受け手の右側に位置し、
    • 仰向けの場合
      • 胸、上腹部を扱う時には、右手を相手の下腹部に添え、左手で手技を行うのが自然でしょう。
        下腹部を扱う時は、左手を胸部か上腹部に添え、右手で施術するのが自然だと思います。
    • 座位の場合
      • 胸、上腹部を扱う時には、左手を相手の背中に当てて支え、右手で施術する。
        下腹部を扱う時は、左手を腰部に当てて支え、同じく右手で施術。

手技

導引口訣鈔では「撫でる」「さする」が多用されており、「〜より手を當て〜を越し〜に至る」等の表現がみられるので、文章からは実際の手技は基本的に一方向への「撫でる」「さする」だと思われます。
ですが、口訣鈔では手技での補瀉(摩=補、按=瀉)は重視しますが、経絡の流注方向やそれによる補瀉の記述も見当たらず、経絡は専ら身体部位名を表すとものとして使用されており、ひょっとしたら往復的に「撫でる」「さする」手技を用いるのも許されるかも知れません。
(実は、個人的には往復的「撫でる」「さする」手技で実験中)

胸腹の訓え 図解1



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  • 1.缺盆骨(鎖骨)に手を当て、そこから任脉上の璇璣(せんき)天突(てんとつ)を越し左の腋下(えきか)に至るまで数回撫でる。
    原文:缺盆骨(けつぼんこつ)より手を當て、任脉通り璇璣、天突を越し左の腋下(えきか、わきのした)に至る。(數片摩つ)
    • 缺盆骨:鎖骨。
    • 摩つ(谷口版では「()づ」と表記):撫でる。
      谷口版:大黒貞勝編著『導引口訣鈔 (附)按腹図解』谷口書店 に附されている原文写し

  • 2.乳の上「膺窓(ようそう)」辺りに手を当て、「膻中(だんちゅう)」の上「玉堂(ぎょくどう)」付近を越して左「膺窓」を越す所まで撫でる。
    原文:()の上膺窓(ようそう)の位より手を當て、膻中(だんちゅう)の上玉堂(ぎょくどう)の位を越し摩て、左膺窓を越して摩つ。

  • 3.右の胸、「食竇(しょくとう)」に手を当て、「中庭(ちゅうてい)」を越し左の「食竇」を越し撫でる。
    原文:右の(あばら)食竇(しょくとう)より手を當て、中庭を越し左(あはら)食竇を越し摩つ。

  • 4.肋骨の下、左の「腹哀(ふくあい)」から右の「腹哀」を越すように、肋骨と肉を分ける。
    原文:肋下(あばらした)腹哀(ふくあい)を越して肉を分る。

 

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